デカフェ《カフェインレスコーヒー》が求められている理由

デカフェ《カフェインレスコーヒー》を語る前に、考慮しなければいけないことがあります。
それは、なぜ、昨今人々にデカフェ《カフェインレスコーヒー》が求められるのか、普通のコーヒーではなにがいけないのか、ということです。
コーヒーが歴史に現れてから、コーヒーは徐々に人間の近くにある飲み物になっていきました。
それはもちろん、大量の消費地である欧米への生産地からの輸送方法の発達で時間的距離が縮まったこともそうですが、本当に美味しくなければただの黒い水ということで人類の友にはなりえなかったでしょう。
そして、ここで語るのは、なぜ人類の友になりえたのか、そして、ならば、なぜデカフェが必要とされるようになったのか、ということです。
まずはコーヒーが人類の友になりえた理由を語っていきましょう。

そのためにまず、「コーヒーは体にいいのか、悪いのか」を論じていきましょう。

コーヒーは世界で最も人気のある、世界各国、人種や性別に関係なく、よく飲まれている飲み物の一つです。
ただ、多くの人がコーヒーを飲むのが好きですが、様々な理由でコーヒーに含まれるカフェインの摂取を制限したいと考えています。
それは、カフェインが身体に少なからずの影響を与える物質であることを理解しているからです。
ここで表題を変えなければいけません。

カフェインは体にいいのか、悪いのか

 

カフェインは体に悪い。だけど、無いのも味気ない

 

仮に、目の前に、カフェインの塊があり、それを飲め、と言われてためらわない人は少ないでしょう。
コーヒーの味を彩る一部なので摂取するのにやぶさかでないのであって、しょうがなく、といういい方もできるかもしれない、本来なら摂取をすることはお勧めできない刺激的な物質なのです。
私たちの生活上にも目に見えない「しょうがなく」が多くあります。
細かいところをいえば、水道水がただの水ではなく、いろいろな成分を含むように、お店で売っているジュースのラベルを見ても、実際には、人体への影響があるかもしれないと言われ、研究を現在も行われている物質が入っているものも多くあります。
それらが許容されているのは、どの物質でもいえることですが、将来病気になるかもしれない、という理由では様々な飲食(物質の摂取)を繰り返す私たちにはそれだけが原因と言えないからです。それを摂取すればすぐに死にます、とでもならない限り、なかなか摂取を禁止するとはならないでしょう。

カフェインもまた、そんな曖昧(グレー)な存在と言えるでしょう。

実際には、カフェインにもいい面というか、利用できる面もあります。
分かりやすい例で言うと、眠気覚まし、としてコーヒーを飲む方も多いでしょう。
現にアメリカの開拓時代など、労働を多く求められた場所や時代にコーヒーが大きく広まったのは、カフェインの覚せいさせる(眠気を遠ざける)力が求められたからです。
言葉にすれば聞こえは悪いですが、カフェインは覚せい剤なのです。
それを人体に直ちに影響なく、適量(ほどほど)に摂取できることが、コーヒーが世界に躍進した大きな理由と言っていいでしょう。
まさに人類の歴史とマッチングしたのです。
人類が増え、仕事が増え、活動範囲が広がりますが、時間は24時間しかありません。
人の営みの中で何を削るか。そこで選ばれたのが睡眠時間です。
眠気に抗っても働かなければならない、働かせたい時に、得てして人間は「多少のことには目を瞑る」のです。
人間を働かせるために、人間が働くためにムチとして広まったなんて、まさにブラックなにくいやつですね。

その点で言うと、高度成長期の日本のビジネスマンたちが、仕事場を煙で充満させていたタバコ全盛期も、同じことが言えるでしょう。
タバコ(ニコチン)も、仕事を多くこなすためにその時代にやむなく、いや、その時代に歓迎された刺激物質です。ニコチンの刺激がムチとなってあの時代の企業戦士たちは戦い、時代を支えたのです。
ただ、そのムチ(ニコチン)はカフェインに比べてあまりにも強力で、多くの人々を苦しめ、副流煙などで周辺にも影響を与えるようになったため、急速に勢力を衰退させていきます。ただ私情を挟み言わせていただきたいのは、ムチを多用してまで働いた彼らの尽力により今の私たちの生活があることに多くの感謝の念を抱いていることです。
おそらくそれは、労働によりそれぞれの時代を支えた先人たちがタバコやコーヒーを友にしていたことを知っているからこそ、私と同じように感謝の念を抱き、墓前にタバコやコーヒーを捧げるように、現在もタバコやコーヒーの存在を許容している理由なのかもしれません。体に悪いかもしれないが「しょうがない」と。

タバコは明らかに肺にダメージを与えるなど目に見えて結果が出ているので、現在多く忌避されているだけで、もしカフェインが目に見えて内臓の色を変えたり、他人に害をもたらすものだとなっていれば、コーヒーも禁コーヒーゾーンが定められ、街角でひっそりと一部の人たちが楽しむ、という風になっていたかもしれません。

何事も摂りすぎは体に毒です。カフェインも少量であれば眠気覚まし程度で済みますが、大量に摂取すると、タバコにあったニコチン中毒のように、カフェイン中毒になります。ただ、ニコチンほど人々に嫌厭されていないのは、ニコチンほどカフェインが強力な害をもたらさないため、タバコと同じように20歳以上とか制限を付けられないのでしょう。そのため、コーヒーはタバコと違って、子供から大人まで、それこそ老若男女、誰に気兼ねすることもなく、気軽に手にすることができるのです。

そして、気軽に、簡単にコーヒーを楽しめるようになったからこそ、デカフェの必要性が増してきたのです。

前述のとおり、カフェインは必ずしも安全な物質とは言えません。
最近、コーヒーに限らず、緑茶や紅茶など、カフェインを含有する飲み物にもカフェインレスなどカフェインの無いもしくは少ない商品が現れ、求められるようになっているのは、皆さんもお気づきでしょう。
科学の発展や医学の進歩により、明らかにカフェインの悪い面が発見されたことにより、コーヒーを好む人たちの中にも、好きだけどカフェインは取りたくないという層が現れました。
それは、カフェインが特に危険視されている妊婦さんなど、主に女性が多いです。
しかし、女性への危険性が唱えられてから、まだそれほど時間はたっていません。最近、と言っていいでしょう。
そのため、世界中にコーヒーはすでに広まっており、コーヒーを愛飲する(嗜む)女性は世界中に数多く存在することになっています。
すでにコーヒーを飲む生活を過ごしてきた我々に、彼女たちに、明日からコーヒーをやめろ、と言ってもそれは無理な話です。
やむなく、カフェインの危険性を承知の上で飲む人、量を減らす人もいたでしょう。

そんな「カフェインさえなければなぁ」という需要が増してきた昨今に、デカフェ《カフェインレスコーヒー》が現れます。
発見された当初は薬剤を使ったカフェイン抽出法(溶媒抽出法)は薬剤の残留物などが危険視されましたが、水抽出法(スイスウォータープロセス)やCO2(二酸化炭素)抽出法など、人体に影響の少ないカフェインを抽出する方法が生み出されました。
コーヒーの愛飲者が多くなったが故の必要性とその需要により、今はまだ認知度が低いデカフェですが、これからどんどんコーヒー業界で存在感を増していくでしょう。
そして、デカフェ《カフェインレスコーヒー》を必要とされることが、コーヒーはカフェインという刺激物に頼らずとも愛されている飲み物、という証明になるのではないでしょうか。

カフェインがなければコーヒーじゃない、コーヒー豆に手を加えたものなんてコーヒーとは認めない、という人もいるでしょうが、カフェインを抽出されてもなおコーヒーと思える風味やコクを出すコーヒー豆の懐の深さを感じると、これもコーヒーだなぁ、と思ってしまうのでした。

水抽出法(スイスウォータープロセス)

最近、デカフェについて調べていると、ふと引っかかるものを感じました。

水抽出法(スイスウォータープロセス)、勘違いしていたのかもしれません。

私はてっきり、

コーヒー豆→カフェインとそれ以外の成分を水で抽出→成分が抽出された豆とカフェインと成分の溶けだした水に分ける→カフェインとそれ以外の成分の溶けこんだ水をフィルターにかけてカフェインのみを抽出→カフェイン以外の成分のみの水が出来上がる→それを最初の、全ての成分が抽出された豆に戻す→デカフェの出来上がり

だと思っていました。

(図にするとこんな感じ)

コーヒー豆を水抽出法(スイスウォータープロセス)でカフェインレスにする方法 誤解

しかし、よく調べると、

コーヒー豆→カフェインとそれ以外の成分を水で抽出→成分が抽出された豆とカフェインと成分の溶けだした水に分ける→カフェインとそれ以外の成分の溶けこんだ水をフィルターにかけてカフェインのみを抽出→カフェイン以外の成分のみの水が出来上がる→カフェイン以外が溶け込んでいる水に、他の普通のコーヒー豆(カフェインあり)を浸すカフェイン以外はすでに飽和状態なので、カフェインのみが溶けだすカフェインのみが溶けだした豆が残る→デカフェの出来上がり

(図にするとこんな感じ)

コーヒー豆を水抽出法(スイスウォータープロセス)でカフェインレスにする方法 正解

途中、数工程があるようですが、ざっくり説明するとこんな感じのようです。

もちろん、カフェイン以外の成分を戻す意味もありますが、足し算ではなくて引き算のような工程だったのですね。

自戒をこめて、ここに恥をさらしておきます。

 

デカフェ《カフェインレスコーヒー》のリスクは?

水抽出とCO2抽出は健康上のリスクをもたらさないと言われ、溶媒抽出はコーヒー業界で論争の対象となっています。

溶媒抽出に使用する薬液は、少量でも吸入すると、咳、息切れの原因となります。高用量では、頭痛、吐き気、嘔吐、めまい等を引き起こし、実験動物において肝臓および肺癌を引き起こすことが判明しています。

デカフェが必要とされる理由

 

しかし、1999年にFDA(アメリカ食品医薬品局)は、デカフェ《カフェインレス》コーヒーで摂取する痕跡量が健康に与える影響は少ないと結論づけました。ただしFDAは、残留物は製品の10ppm以下、すなわち0.001%以下に厳格に制限しています。

コーヒー生産者は、酢酸エチルで脱カフェイン化された豆は、その化合物がいくつかの農産物に天然に存在するため、「自然に脱カフェイン化」しているといいます。

要するに、今日のカフェイン処理工程で使用されている溶剤は、以前よりもはるかに安全であり、一般的に微量でしか見つからないということです。

気になるようでしたら、お店の方に抽出方法をお問い合わせください。

デカフェ《カフェインレスコーヒー》の成り立ち

1900年代初頭、コーヒー豆の輸送中にコーヒー豆が海水に浸され、自然にカフェインの一部が抽出された後、ドイツのコーヒー販売会社ルートヴィッヒ・ロゼリウスが偶然、デカフェ《カフェインレスコーヒー》を発見しました。

数年後、ロゼリウスは脱カフェインする手段として初めて特許を取得しました。しかし、彼の方法は、塩水だけでなく、ベンゼンという強力な化学溶剤も使用しました。

(ベンゼンは吸入すると少量でも眠気、めまい、頭痛、目、皮膚、呼吸器の刺激を引き起こすことがあります。妊婦の血液疾患、および胎児発達の問題に影響を及ぼすともいわれています。)

 

いまでは、コーヒーメーカーはより安全なカフェイン除去方法に切り替えましたが、カフェインを取り除くために強力な化学物質を使用しているものも多くあります。その一方で、カフェインと共にコーヒーの健康的な化合物が失われているのでは、とも言われています。

 

通常のコーヒー豆からカフェインを除去するには、3つの重要な方法があります。最も一般的なものは化学溶剤の使用するもの。そして液体の二酸化炭素(CO2)を使用。最後は水を使用したものです。

美味しいデカフェを飲もう

溶媒抽出

1906年にドイツで開発された、世界最初の脱カフェイン法。ケミカル・メソッド(chemical method又はprocess)と呼ばれます。エチルアセテート(天然には果実に含まれる)やメチレンクロライド(塗料、医薬品などの産業用に一般的に使用される)などの合成化学物質に依存したもので、カフェイン以外の成分も抽出してしまう欠点があります。

 

CO2(二酸化炭素)抽出

1974年に開発された、二酸化炭素でカフェインを抽出する方法です。

薬(溶媒)を使用しないので、環境面においても優れています。

 

水抽出

ウォーター・メソッド(water method又はprocess)、またはスイス式水抽出法(Swiss water method)と呼ばれています。1941年に開発され、1943年にアメリカで特許申請されました。

コーヒー生豆を水槽に入れ、水通しをしてカフェインとそのほかの水に溶けやすい成分も抽出します。そして抽出した水から有機溶媒を使ってカフェインだけを除去して残った成分を再び生豆に戻す方法です。

カフェイン以外を取り除かないことから、最も風味豊かな方法と言われていますが、そのため大変高価になり、大規模に生産することが困難な方法です。

マウンテンウォーター製法という水抽出法の名称を耳にすることがあるかもしれませんが、これはメキシコの山の水を使った水抽出法の名称です。

 

上記のとおり、3種類の製法でデカフェは作られていますが、ご覧のとおり、デカフェはカフェインのあるコーヒー豆からカフェインを抽出して作られることから、完全にカフェインを除去できているとは言えないものなのです。

限りなくカフェインを取り除いたコーヒー豆(ただし、カフェインが無いとは言ってない)、それがデカフェ《カフェインレスコーヒー》です。

カフェインレスとデカフェの違い

ファーストウェーブと言われる、日本にインスタントコーヒーが来て空前のコーヒーブームが到来してほぼ半世紀。いまやサードウェーブというコーヒーの新たなムーブメントが来ていると言われています。

それほど日本に根付いたコーヒー文化に、カフェインフリーカフェインレスデカフェというカテゴリーがあることにお気づきでしょうか?

コーヒーと言えばカフェインが入っていて、眠気覚ましに飲む、というカフェインの効果を期待して飲まれている方も多いと思います。

そのカフェインの効果にも、良い面と悪い面があります。

カフェインの良い面を端的に言うと、眠気覚ましやリフレッシュに効果的であり、

カフェインの悪い面を端的に言うと、多く常用すると中毒症を引き起こしたり、妊婦の方や子供に害を及ぼす場合もあります。

コーヒーにはカフェインが入っている

その悪い面を取り除いてコーヒーを楽しみたい、という需要が今高まっています。

その需要にこたえるカテゴリーとして、カフェインフリーカフェインレスデカフェなどがあります。

でも、カフェインフリーカフェインレスデカフェって何が違うのだろう?呼び方の違い?両方ともカフェインが入ってないのでしょう?と思われた方も多いかと思われます。

その違いを説明していきたいと思います。